#1 合併症(心不全、致死性不整脈、心原性ショック)による生命の危険

看護問題#1について

3大合併症について

心筋梗塞では、冠動脈の狭窄や攣縮によって心筋が虚血状態になり、冠血流量不足によって心筋壊死が起こります。

心筋の壊死により、心ポンプ機能が低下することによって心拍出量も低下し、急性心不全や心原性ショックを引き起こしやすくなります。

また、心筋壊死にともなって、心細胞も破壊され、電気的に不安定になることにより、異常伝達が生じます。

異常伝達は心室性期外収縮や房室ブロックなどを引き起こし、致死性不整脈に移行するおそれがあります。

合併症への対策

これらの心不全、不整脈、心原性ショックは、3大合併症とされ、発症1時間前後から出現して、高い死亡率の原因になっています。

発症直後からの迅速で適切な治療が、予後を大きく左右します。

全身状態の観察を十分に行い、合併症の早期発見、早期対策をすることが、看護のポイントになります。

また、ヘパリンやニトロールなど、輸液ポンプによる慎重な薬物療法の管理も重要です。

事例における問題と対策

S氏は、前壁中隔梗塞と著しい駆出率の低下によるうっ血性心不全を合併しています。

さらに、心筋内の電気伝達異常による不整脈(期外収縮、ショートラン)も出現していて、予断を許さない状態です。

意識状態は清明ですので、自己判断で動いてしまったり、酸素を外したりすると、心負荷が過剰になってしまい、合併症がさらに悪化しやすくなります。

最悪の場合、死に至るおそれも考えられます。

したがって、バイタルサインや胸痛などの自覚症状、心電図モニター、各検査データに注目して、異常の早期発見につとめます。

それとともに、十分な指導を行って、治療に関する理解を得る必要があります。



看護計画#1

看護目標

合併症の早期発見および早期対処ができる。

・心不全、不整脈、心原性ショック

OP(観察計画)

■看護計画

1 バイタルサイン測定(30分~1時間毎に測定)

2 自覚症状の有無、程度

・意識状態、胸痛、動悸、嘔気、嘔吐、呼吸困難、咳嗽、血痰、チアノーゼ、倦怠感

3 心電図モニター

・心拍数、ST変化

・不整脈(心室性期外収縮[多原性か、連続性か、RonT型か]、心室細動、心室頻拍など)

4 肺音聴取

5 水分出納(摂取量[in take]と排泄量[out take]のバランス)

6 スワンガンツカテーテルでの中心静脈圧、心拍出量、肺動脈圧、肺動脈楔入圧の測定

7 採血データの確認

・AST、ALT、CPK、LDH、CRP、WBC、Na、K、Cl

8 動脈血ガス分析データ

9 胸部X-Pの確認

・CTR、肺うっ血の程度

■看護計画の根拠・理由

1、2 心ポンプ機能低下にともなう血圧低下や脈圧減少、不整脈、肺うっ血にともなうか呼吸が出現する可能性があります。

3 前壁中隔梗塞なので、心室性の不整脈が出現しやすくなります。重症不整脈に移行しやすいので、注意します。

5 心負荷を軽減させるために、利尿薬を投与していますので、尿の流出とともに、摂取(in take)である輸液量を考慮しながら、水分出納を監視する必要があります。

7 各酵素の値から心筋の状態を予測し、ケアの指標にします。

血清カリウム値と不整脈の種類や、出現の度合いを観察する必要があります。

TP(ケア計画)

■看護計画

1 安静の保持

2 薬物の確実な与薬

・点滴管理、内服薬の与薬

3 確実な酸素吸入の管理

4 安楽な体位の工夫

5 電極を交換するときは、同一部位に貼付する。

■看護計画の根拠・理由

2 与薬量を厳密に調整する薬剤もあるので、常に確認します。

5 心電図の電極位置がずれると、波形が異なってしまいます。

装着する部位は、12誘導の電極に差し障りがない、同一部位であることが望ましいです。

マーキングしてわかりやすくします。

EP(教育計画)

■看護計画

1 胸部症状出現時は、すぐにナースコールを押すように説明する。

2 絶対安静の必要性について、納得するまで説明する。

3 食事、飲水制限について説明する。

4 各種ルート類の必要性について説明する。

■看護計画の根拠・理由

2 適切な治療がなさなければ、死に直結する可能性もあります。

各治療の必要性について説明を行って、理解を得る必要があります。

理解が得られれば、患者のストレスも軽減します。

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