#3 絶対安静にともなうセルフケアの低下

看護問題#3について

セルフケアによる危険性

発症直後は、日常生活を送るうえで必要な、食事、排泄、清潔、更衣など、すべての日常生活行動を避け、心仕事量を増やさないことが重要な治療になります。

自己判断で身体活動を急激に増やすと、心負荷が増大して、心筋の酸素消費量が増加します。

そうなると、冠動脈の血流が減少し、胸痛や再梗塞を引き起こして、危険な状態におちいりやすくなります。

そのため、セルフケアの拡大は、心機能の評価を行いながら慎重にする必要があり、自己判断による身体活動は非常に危険です。

患者のとまどいへの対応

これまでの自立した生活から絶対安静になり、食事、排泄、清潔、更衣などの援助を受けることに対して、患者はとまどいを感じたり、遠慮してしまうことがあります。

急性期を脱するまでは、安静が必要になるので、看護師が生活への援助を代わりに行うことを、患者に十分に説明して、了承を得る必要があります。

事例における援助

S氏は54歳で、今まで自立した生活を送っていたが、床上安静になり、日常生活の行動を制限されて、看護師の援助を受けることに対して抵抗感や羞恥心を感じると思われます。

そのために、自己判断でセルフケアを行ってしまうことが、考えられます。

S氏の精神状態に配慮し、短時間で援助することや、必要な援助が適宜できるようにすることが大切です。



看護計画#3

看護目標

胸痛を起こさずにセルフケアの拡大ができる。

OP(観察計画)

■看護計画

1 自覚症状の出現と程度

2 バイタルサインの変動の有無

3 心電図変化の有無(ST変化、不整脈)

4 動脈血酸素分圧

5 セルフケア低下に対する患者の言動(ストレス、疑問など)

6 尿量、尿比重、尿留置カテーテルの管理状態

7 排便回数、量、性状

■看護計画の根拠・理由

1-3 安静度の拡大やセルフケア行動は心負荷になるので、バイタルサインや心電図に変化が現れることがあります。

心電図や自覚症状を確認しながらセルフケアを援助し、異常の早期発見につとめて、早期に対処ができるようにします。

6 尿留置カテーテルは違和感や疼痛の原因になります。

固定やねじれなどを観察する必要があります。

TP(ケア計画)

■看護計画

<保清・更衣>

1 清拭、陰部洗浄:体調に合わせて部分清拭を組み合わせながら行う。

2 更衣:清拭時に交換する。

3 足浴、手浴:2回/週

4 洗髪:ケリーパッドで1回/週

5 口腔ケア

・歯磨き:3回/日

・含嗽:適宜

6 ひげそり:1回/日

<食事(開始する場合)>

7 ギャッジアップをして、食べやすい姿勢にする。

8 食事時間は短時間にして、食後は最低1時間の休息を取るようにする。

9 食事中、酸素カニューレが外れないようにする。

10 冷たい飲み物は避ける。

<排泄>

11 1回/2日は排便があるように、緩下剤などを使用してコントロールする。

■看護計画の根拠・理由

1-5 長時間のケアや頻回の体動は心負荷になります。

できるだけ手早く援助できるようにケアの方法を決めます。

1-5 絶対安静や面会制限などから、患者の気力が低下することがあります。

ふだんと変わらない生活の質を保つことができるように、口腔ケアやひげそり、更衣などの身だしなみにも配慮するようにします。

7-9 食事動作や咀嚼運動が、酸素消費量を増大させて心負荷になるので、指示量の酸素が確実に吸入できるようにします。

また、安楽な体位で食事ができるようにします。

食物の消化に心負荷を考慮して、カロリーや塩分を制限した食事から開始します。

10 冷たいものは心臓への刺激になるので避けます。

11 絶食による腸内容物の減少は、胃結腸反射や排便反射を低下させ、床上安静は腸蠕動運動を抑制するので、便秘になりやすいです。

排便時の怒責は胸腔内圧を高め、冠血流量の変動から心仕事量を増加させて、胸痛を生じやすくさせますので、排便コントロールが必要です。

EP(教育計画)

■看護計画

1 安静度の拡大にあわせて、自分で動いてよい範囲をはっきりと説明する。

2 自己判断でセルフケアの範囲を拡大しないように指導する。

3 自分で体位変換をするときや、便器を挿入しているときなどに、自覚症状や異常を感じたら、すぐにナースコールで呼ぶように説明する。

4 酸素カニューレは、指示があるまでは外さないように指導する。

■看護計画の根拠・理由

1-2 自覚症状がないと、患者は安心して指示範囲を越えて自分で行うことがあります。

その結果、心仕事量が増大して胸痛などが出現しがちです。

安静度と心負荷に関する指導を行い、看護師の観察のもとでセルフケアを行うことが大切です。

4 行動の拡大にともなって心負荷が増大し、酸素消費量が増えます。

ポンプ機能が安定するまでは、十分な酸素を心筋に供給しながら、行動を拡大するようにします。

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