心筋梗塞や狭心症といった、虚血性心疾患は成人の3大死因の一つです。
とくに心筋梗塞は死亡率も高く、発症直後の早期の治療が必須になります。さらに重篤な合併症の有無が予後に大きな影響を及ぼします。
したがって、急性期の看護では、生命維持と合併症予防のための徹底したモニタリングが重要です。
さらに、生命や予後に関する患者の不安や苦痛の緩和もポイントになります。
事例紹介
患者データ
・患者 S氏
・年齢、性別 55歳、男性
・職業 会社員
・診断名 急性心筋梗塞、高脂血症
・既往歴 20年前にEBウイルス肝炎(短期入院で治癒)
・家族暦 2人兄妹の長男。父親が心筋梗塞で死亡。母親は85歳で不整脈(心房細動)の治療中。妻52歳。長男(24歳、会社員)と長女(20歳、大学生)。
・性格 まじめできちょうめん
・生活習慣 10年ほど前から高脂血症で食事指導を受けていた。しかし、仕事上のつき合いでの飲酒や会食の機会も多い。睡眠時間は5~7時間程度。多忙の時期には4~5時間程度のこともある。
発症から入院時、入院後の経過
■発症から入院までの経過
以前よりときどき胸部が苦しくなることがあったが、安静にしていると消失していた。
1月30日の夜間に胸部の痛みがあったが、次第に消失した。
翌日、起床時より胸部痛がかなり強くなったため、家族の通報によって救急車で病院に搬送される。
■入院時の状態
意識は鮮明。
前胸部痛を強く訴える。
心電図V1~V4でST上昇が見られたため、舌下にミオコールスプレー(ニトログリセリン噴霧剤)を噴射したが、胸痛は軽減されなかった。
以上の所見から心筋梗塞と診断され、血管確保のうえヘパリンを静脈注射し、酸素吸入を開始。
入院になる。
■入院後の経過
心電図ではV1~V4のST上昇が続き、CTR(心胸郭比)は55%であった。
血栓溶解剤を静脈注射してから、CAG(冠動脈造影)を行う。
その結果、LAD(左前下行枝)#6で99%の閉塞が認められたため、PTCA(経皮的冠動脈形成術)を行ったところ、25%まで開存した。
LCX(左回旋枝)#11は75%であった。
心エコーや心筋シンチの所見では、前壁の障害を示していた。
以上のことから、今回の心筋梗塞発作は#6の99%の閉塞が原因と考えられた。