1 心臓の仕組み
■心臓の位置と形
心臓は手を握った拳くらいの大きさで、左右の肺のあいだにあり、正中線(身体の中心線)よりもやや左側にあります。
心臓の下方は横隔膜に接していて、上方は動・静脈の出入り口になっています。
心臓の下方のとがったところを心尖といい、ここで拍動を触れることができます(心尖拍動)。第5肋間の乳頭線上になります。
■心臓の血管
心臓の壁(心筋)は厚いため、栄養を供給する血管が必要です。その栄養血管を冠状動脈といいます。
冠状動脈は、大動脈の根元のバルサルバ洞というふくらんでいる箇所から、左右に1本ずつ出て、枝分かれしながら心臓全体を覆っています。
右冠状動脈は、右心室(周縁枝)と左心室裏側の下壁の一部(後下行枝)に伸びています。
左冠状動脈は、すぐに2つに分岐して、表(左前下行枝)と裏(回旋枝)から左心室に栄養を供給しています。
静脈は、左側の表(大心静脈)と裏(中心静脈)および、右側(小心静脈)が、右心房の裏側で冠静脈洞となって右心房に流れ込んでいます。
一般に、心筋梗塞での冠状動脈の閉塞部位は、冠状動脈の部位の番号で示されます。
右冠状動脈(RCA)は1~4、左冠状動脈(LCA)は5~14。
冠状動脈は、互いに迂回路のない枝分かれした終動脈という形になっているので、閉塞が起こると、そこから先には血液が供給されずに、心筋が壊死してしまいます。
■心臓の神経
心臓に分布する交感神経は、胸部の脊髄(胸髄)に上部に連絡しているので、心臓の痛みを胸や背中(胸髄上部の支配領域)の痛みとして感じることがあります。
また、心臓や心膜からの感覚は、頚部の脊髄(第3~第5頚髄)に入るため、肩の痛みとして感じることもあります。
2 心臓の働き
心臓は、血液を全身に循環させるポンプの働きをしています。
CO2(二酸化炭素)を多く含んだ、全身からの静脈血は右心房に入り、右心室から肺に送られます。
肺では、肺胞でのガス交換によって、血液中のCO2を放出して、O2(酸素)を取り込みます。
O2を多く含んだ血液は左心房に入り、左心室から全身に送り出されます。
まとめると次のようになります。
全身(CO2多い)→ 右心房 → 右心室 → 肺(ガス交換後、O2多い)→ 左心房 → 左心室 → 全身
3 心電図
■心筋の収縮
18世紀のイタリアの科学者ガルヴァーニが、カエルの足に電流を流すと、筋肉が収縮することを発見しました。
同じように、心臓の筋肉(心筋)も電気の刺激によって収縮します。
心臓には次のような電気の刺激が伝わる仕組み=刺激伝導系があります。
洞結節(右心房)→ 房室結節 → ヒス束(心室中隔) → 左脚、右脚 →プルキンエ線維(左心室、右心室)
規則的に洞結節から電気信号が出され、最初に左心房と右心房の筋肉が収縮して、たまっている血液を、それぞれ左心室と右心室に送り出します。
次に電気信号が左心室と右心室の筋肉に届いて収縮させると、血液が全身と肺に送り出されます。
■心電図
この心筋の動きを記録したものが心電図です。1903年にオランダのアイントホーフェンが初めて記録しました。
電気信号によって心筋が収縮するときに、筋肉内の電気量が急激に変化するので、この様子をグラフにすることによって、心臓の動きがわかります。
心電図の最初に現れる小さな波(P波)は、心房の収縮をあらわします。
次に大きく現れる大きな尖った波(QRS波)は、心室の収縮をあらわします。
最後に現れる緩やかな中くらいの波(T波)は、心室の心筋が治まる様子をあらわします。
■12誘導
心臓は、立体的な形をしているので、心電図もさまざまな方向からとる必要があります。
通常は、12種類の方向からの心電図をとります。
そのためには、手首、足首、胸部につけた電極端子間の電位差などから測定します。
これを12誘導といいます。
心臓の横断面の動きをみるのが、V1~V6の心電図で、縦断面方向からみるのが、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVR、aVL、aVF です。
12種類の心電図の波形は、異なった角度から測定しているので、違っています。
しかし、診断では、波のタイミングや上下の動きが正常であるかをみます。