1 初期治療
発症直後は、できるだけ早く、CCU(冠動脈疾患集中治療室)に収容することが大切です。
急性心筋梗塞の死亡原因では、心原性ショックと心破裂が多くなっています。
初期には、おもに次のような治療・処置を行います。
・酸素吸入
・ニトログリセリンの舌下:心仕事量の減少および痛みの寛解。
・不安の除去と疼痛の除去:十分な説明と塩酸モルヒネの静注。
・心電図モニター:致死的不整脈の早期発見。
・薬物使用:抗不整脈薬の使用、血圧・脈拍のコントロール。
・ヘパリン(抗凝固薬)の静注:再灌流(さいかんりゅう)療法前に再開通が得られる率の増加。
2 再灌流療法
閉塞した冠動脈の血流を回復させる治療で、次のようなものがあります。
・血栓溶解療法
経皮経管冠動脈血栓溶解療法(PTCR)を行います。血管内にカテーテルを血栓まで挿入して、血栓溶解剤を注入して溶解します。
・経皮的冠動脈形成術(PTCA)
血管内に入れたバルーンカテーテルを狭窄部分に挿入して、バルーンをふくらませて血管を拡張させます。
・冠動脈バイパスグラフト術(CAGB)
手術によって、大動脈と梗塞血管の間にバイパス(迂回路)を作ります。
バイパス用の血管として、動脈の場合は、動脈硬化を生じにくい、胸骨の裏の内胸動脈や前腕の橈骨動脈を使用します。
3 薬物療法
次のような薬物を用います。
・塩酸モルヒネ:胸痛を軽減することで、不安による交感神経の緊張を緩和して、心拍数を抑制。
・アスピリン:再梗塞予防に有効で、急性期から使用。
・ヘパリン:急性期の再開通率の向上に有効。慢性期の再梗塞予防効果は少ない。
・硝酸薬:虚血発作時に有効。
・β遮断薬:心拍数減少、酸素需要低下。
・Ca拮抗薬:心不全と伴わない非Q波梗塞に対して予後改善効果。
4 退院後の指導
動脈硬化の進行防止
・高脂血症の改善
総カロリーを抑え、標準体重を維持します。
・高血圧の改善
血圧を正常に保つように、食塩摂取を制限して、必要のあるときには降圧剤を使用します。
・禁煙とし、飲酒も控えるようにします。
・糖尿病の治療
日常生活の指導
・状態にあわせて、適度な運動を行います。
・温度差の減少:脱衣所、トイレ、冷水などによる温度に注意します。
・入浴:時間や温度を調節して、状態にあわせて半身浴にしたりします。
・性生活:体調にあわせて、無理をしないように説明します。