情報から抽出した問題点
心筋梗塞を発症して治療を受けているS氏の病態、生活像、入院・治療に対する反応、基本的ニードの充足度をまとめてみます。
そこから、どのような問題が起こり得るかを、検討してみます。
■リスク因子
S氏の心筋梗塞のリスク因子は、肥満、高脂血症、高血圧、ストレス、きちょうめんな性格、父と兄が心筋梗塞で死亡していることです。
■生命の危険
S氏の場合、左前下行枝に99%の狭窄が起こり、心臓の前壁から前壁中隔に及ぶ広範囲にわたって心筋壊死が生じました。
入院直後から心ポンプ機能が低下し、CTR 55%と肺うっ血が見られて、左心不全が起こっています。
また、心筋内の電気伝達異常により、期外収縮とショートランが見られています。
これは致死性不整脈に移行する可能性があります。
さらに、心拍出量の低下によって血圧が低下し、心原性ショックに至ることもあります。
以上の、左心不全、致死性不整脈、心原性ショックの3大合併症は、直接に生命に危険を及ぼします。(→#1)
■安静による問題
発症直後は、酸素消費量を抑えるために、絶対安静、絶飲食になります。
このため、腰痛(→#2)や、のどの渇きや口腔の不快感、発汗などによる身体の不快感、ベッド上での排便などのセルフケアの低下が問題になってきます。(→#3)
■急性心筋梗塞による不安
緊急入院したS氏は、ただちにCAGやPTCAなどの侵襲的な処置を受けました。
また、長時間持続する強い胸痛を体験し、父親や兄の様子を思い出して、死への恐怖や社会復帰に対しての不安と強いと思われます。
さらに、さまざまなカテーテル類が挿入され、ストレスの強い治療環境に置かれることや、身体の拘束感も不安を助長させています。(→#4)
看護上の問題
以上のことより、S氏の看護上の問題は次のものと考えられます。
#1 合併症(心不全、致死性不整脈、心原性ショック)による生命の危険
#2 絶対安静にともなう腰痛による苦痛
#3 絶対安静にともなうセルフケアの低下
#4 急性心筋梗塞の診断を受けたことによる予後に対する強い不安